暑さに負けない!熱中症対策の基本と実践

各地で梅雨明けし、夏本番がやってきました。近年、地球温暖化の影響もあり、日本の夏は年々厳しさを増しています。猛暑日(最高気温35℃以上)も珍しくなくなり、熱中症による救急搬送や死亡例が報道されることもあります。熱中症は誰にでも起こりうるものであり、年齢や体力にかかわらず注意が必要です。この記事では、熱中症の基本知識から予防法、起こりやすい場所、いざというときの対処法までをわかりやすくご紹介します。夏を健やかに過ごすためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
★熱中症とは?
熱中症とは、高温多湿の環境下で体温調節がうまく機能しなくなり、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで起こる健康障害です。主な症状には以下のようなものがあります。
- めまい、立ちくらみ、顔のほてり
- 筋肉のけいれん(足がつるなど)
- 頭痛、吐き気、倦怠感
- 意識障害やけいれん(重度)
重症化すると命にかかわることもあるため、「暑いな」「ちょっと気分が悪いな」と感じたときが、対処のタイミングです。
★熱中症が起こりやすい場所とは?
熱中症は「炎天下」だけで起こるわけではありません。以下のような環境では、特に注意が必要です。
① 室内(高齢者の居室、自宅)
実は、熱中症による搬送の多くは「住宅内」で発生しています。特に高齢者は暑さに鈍感になりやすく、エアコンを使用しないことでリスクが高まります。
対策:・エアコンや扇風機で室温・湿度を快適に保つ
・こまめに水分補給を促す声かけをする
② 自動車内
夏の車内は数分で50℃以上になることもあります。特に小さな子どもやペットを残すのは大変危険です。
対策:・短時間でも車内に人を残さない
・駐車中は必ず外へ出る
③ 運動場・体育館・グラウンド
運動中の熱中症も多く、特に人工芝やコンクリートの照り返しが強い場所は体温が急上昇します。体育館も通気性が悪いと危険です。
対策:・水分補給と休憩をこまめに取る
・気温・湿度を確認し無理な運動を避ける
④ キッチン・工場・作業場
火を使う場所や工場などの作業現場も、熱がこもりやすく、知らず知らずに体温が上がっていることがあります。
対策:・適切な換気と休憩
・作業時にも水分と塩分補給を意識
⑤ ベランダや日陰の屋外
直射日光がなくても、気温・湿度が高ければ熱中症は起こります。コンクリートに囲まれた場所や風の通らない空間では注意が必要です。
★熱中症を防ぐ日常の工夫
① こまめな水分と塩分補給
のどの渇きを感じる前に、定期的に水分をとりましょう。大量の汗をかいたときは、塩分も一緒に補えるスポーツドリンクや経口補水液が有効です。
② 室温と湿度をこまめにチェック
エアコンや扇風機を活用し、室温は28℃以下、湿度は60%以下を目安に調整しましょう。温湿度計の設置が効果的です。
③ 通気性の良い服装と暑さ対策
吸汗・速乾素材の衣類、日傘や帽子を活用しましょう。首元を冷やすグッズや携帯用扇風機もおすすめです。
④ 無理をしない生活リズム
気温が高い時間帯(11時~15時)の外出や激しい運動は避けましょう。外での作業は朝夕に分散し、適度な休憩を取りましょう。
★「かくれ脱水」にも注意!
体の水分が不足していても自覚がない「かくれ脱水」は、特に高齢者に多く見られます。次のようなサインがある場合は注意が必要です。
- 口が乾いている
- 尿の回数が減っている
- 皮膚にハリがない
- 微熱や倦怠感がある
★もし熱中症が疑われたら 〜すぐに行うべき応急処置〜
熱中症の症状が見られた場合は、迅速な対応が何より重要です。重症化を防ぐためにも、以下の手順に沿って落ち着いて行動しましょう。
① 涼しい場所へ移動する
まずは、本人を風通しの良い日陰や冷房の効いた屋内に移動させましょう。直射日光や高温環境から遠ざけることが最優先です。
- 屋外なら木陰や日陰、屋根のある場所へ
- 室内であれば冷房の効いた部屋や玄関先でも可
② 衣服をゆるめて安静にする
体から熱を逃がしやすくするために、衣服をゆるめたり、ボタンやベルトを外したりします。可能であれば、靴や靴下も脱がせてください。
- 体を横にさせ、足を少し高くすると回復しやすくなります
- 嘔吐がある場合は、横向きに寝かせて誤嚥を防止
③ 体を冷やす
次に、体温を下げることが重要です。特に体の「冷却ポイント」を中心に冷やします。
- 首の両側(頸動脈)、わきの下、足の付け根(鼠径部)
- 保冷剤、冷たいタオル、水をかけてうちわで扇ぐなどの方法でも可
- 可能であれば全身に霧吹き+扇風機で気化熱を利用すると効果的
④ 水分・塩分を補給(意識がある場合)
本人に意識がはっきりあり、自力で飲める場合は、速やかに水分を補給します。大量に汗をかいている場合や脱水の疑いがある場合は、塩分も一緒に補えるものを選びましょう。
- 冷たすぎない水、スポーツドリンク、経口補水液がおすすめ
- 飲ませすぎず、少しずつ何回かに分けて飲ませる
- 嘔吐やむせこみがある場合は無理に飲ませないでください
⑤ 回復しない場合や意識障害がある場合はすぐに救急要請
次のような場合は、すぐに救急車(119)を呼んでください。
- 意識がもうろうとしている、返答が不明瞭
- 呼びかけに反応しない、けいれんがある
- 水分が飲めない、吐いてしまう
- 応急処置をしても改善が見られない
応急処置と並行して救急隊の到着を待ちましょう。本人の状態、応急処置の内容、経過をしっかり伝えることが大切です。
熱中症は、だれにでも起こる可能性がある身近な健康トラブルです。でも、日ごろから少し気をつけることで、多くの場合は防ぐことができます。
こまめな水分補給、無理をしないこと、涼しい環境づくり——。どれも難しいことではありませんが、「気づいたときに、すぐ行動すること」がとても大切です。また、家族や周りの人にも気を配ることが、熱中症の予防につながります。「ちょっと暑そうだな」「水分とったかな?」と声をかけ合える関係が、健康を守る第一歩です。
この夏も、自分と大切な人を守るために、やさしい気配りと少しの習慣で、元気に乗り切りましょう。